……あっちぃー
セナちびやチームの連中に説教出来るくらい
暑いのは割と平気な俺でも、
今年の暑さは結構キツいなと思ったね。
相変わらず日中は外にいた時間の方が長かったから、
節電してたからってのはあんまり関係ねぇし。
その節電に備えてってことで、
あちこちで貰えた販売促進グッズも、
濡らすと冷たいクールタオルとか、手持ち扇風機のミストファンとか、
お役立ちグッズが多かったから、
涼しくって助かったのと同時、
水をとれ塩をとれって、ボ〜ッとなる前に気をつけられたし。
それでも、気がついたら ついつい“暑い”言ってたもんな。
やっぱ半端なかったんだろな、こりゃあ。
◇◇
「そーか、そんでか。」
ちょっとした小あがりならともかく、
きっちり畳み敷きの和室というだけでも珍しいかもなご時勢だってのに、
そりゃあ青々とした畳を敷き詰めた、
六畳の茶の間の真ん中には丁寧に使い込まれた丸い卓袱台。
その傍らに、少々着ならしのすぎた感のある
Tシャツに木綿のパンツ姿という恰好の当家のお父さんが、
胡座をかいて座しておいでで、
「何の話だよ。」
食後の夕べのひととき、
よく冷えた甘い西瓜をご堪能中の蛭魔さんチの似た者親子。
ここまでの説明だけだと、特になんてことはなかったけれど、
双方ともにそれは見事なプラチナゴールドの髪を
手櫛だけでまとめたナチュラルヘアに、
金茶色の双眸、まるきり陽に灼けてない白い肌と来て。
ちょっとした人出の中に混ざっていると、
どこの国からおいでの観光客ですかと
取材に来ていたテレビ局の方から
マイク向けられて聞かれることもしばしばだとか。
妙なところでノリがいいというか、
向けられたカメラへと愛想を振り撒き、
【 oh、ニホンの皆サン、コニチワ〜♪】
それを観た知り合いが、
思わずテレビの前で噴くところまで計算ずくだからだろう、
無邪気な(?)お茶目をするのまでお揃いな、
何とも困ったお父さんと息子さん。
大小2つの背中を並べての、
同じような座りようをしていると判るのは、
模様ガラスのはまったガラス障子の向こう、
キッチンにおいでのお母様だけなのだけれども。
そんな蛭魔さんチの父と子が、
ふとした一言から、お顔を見合わせていて、
「いや何、さしものお前でも今年はさすがに堪えてたんだなと。」
卓袱台の上に置かれたリモコンを手早く操作すれば、
昭和の色濃いお茶の間に、
それだけが浮いていた大画面薄型液晶テレビに映し出されたのは、
カップ入り、赤いシロップのフラッペを、
ストロースプーンで愛らしくも食しておいでの金髪坊やで、
「な…っ。」
「今年は結構、氷やアイス、食ってたもんな。」
ほれほれほれと、リモコンを操作してゆけば、
アメフトイベントがあったスタジアムや、
合宿で運んだ覚えがある高原の公園、
同じく、砂浜での特訓スケジュールを組んで、
日帰りで向かった海岸の浜茶屋などにて、
棒つきアイスキャンデーやかき氷を頬に当てていたり食べていたりする、
子悪魔坊やのスナップが、出るわ出るわ。
「…どこにカメラ仕込んでやがった。」
「これ、ヨウちゃん。お家の中で水鉄砲はダメでしょう。」
随分小さいころのお約束よ?忘れたの?と、
麦茶を運んで来たお母様、
坊やが胸元へ抱え込んでいた、
ビタミンカラーの機関銃型水鉄砲を見とがめたものの。
“いかにもな丸っこいデザインだが…”
水の代わり、圧搾空気だけ入ってる代物らしいなと、
すぐに気づいた父も父。
しかも、
「判った判った、ヘリウムガス浴びせられんのはごめんだ。」
アヒル声にされてはかなわんと笑い、
両手を挙げるとわざとらしくも、
後からお越しの奥方の背後へ隠れるように廻り込み、
「ただ、隠しカメラじゃねぇんだな。」
「じゃあどうやって。」
「あちこちの防犯カメラへのハッキング。」
……それって犯罪じゃね?
自分だってやってるくせに何言うかな、
あ、俺のPC使ったなっ、
人聞きの悪い、そんなことするかい。
ただでさえトラップだらけなんだろし、
こんくらいのことならモバイルで十分だ…なぞと、
さすがはお父様で、
子悪魔坊やの上をゆくお手並みで
ひょひょいとやらかしたらしい悪戯だったようですが。
「まま、甘いものは苦手だなんて言って水ばっか飲むよりはマシだったがな。」
「スポーツドリンクまで置いてる屋台とか出店は少ねぇんだよ。」
今年のあまりの暑さに、水分さえ採ってりゃいいんだろうと、
ジュースの類をがぶ飲みし、
腸から冷やして体調崩したり、甘いものの採り過ぎで食欲落としたり、
結果、重い夏ばてを拾った人も多かったそうで。
あと、水だけを飲むのも、血液中の成分が薄まる…という印象があるが、
実はその逆で、血液成分はドロドロ化し、血栓などが出来やすくなるんだとか。
塩分濃度がぐぐんと下がるので、こりゃいかんと補給され倒すんでしょうかね?
知識はちゃんとあったし、心掛けてもおいでの、
これでも、学生アメフトチームの鬼軍曹、だから。
そこのところは基本事項として気をつけていたし、
守れない連中をびしばーしと引っぱたいてでも
従わせてもいたほどではあったが。
「可愛いねぇ。」
「本当にvv」
「〜〜〜〜〜〜。」
鬼軍曹の肩書が形無しになろうほどの、
確かに愛らしい表情のやアングルのものばかりが集められてあり。
父上だけならともかく、お母さんまで、あら可愛いvvと喜んでおいでともなると、
あとで“消せ”と詰め寄る訳にもいかぬ。
“あら、あの写真集のディスクはどうしたの?とか
あとあとで訊かれるだろからな。”
母ちゃん味方につけやがってよと、
ぷんぷんとぶうたれつつも、
ズボンのポケットの中で、携帯がむ〜んと唸り出したため、
しょうがないかと切り替えるところは、おさすがの子悪魔様であり。
「……あ、ルイか。うん、今はウチだ。」
てきぱきと操作をし、会話を始めつつもう立ち上がってた辺り、
“ま、着メロの種類で、相手は出る前にも判るからな。”
小さな背中が、二階の自分の大部屋へ向かうのを見送って、
こそりと微笑ったお父様だったのは、
“さすがにここまでは気づいてなかったようだが。”
からかわれでもしたものか、叩くぞ〜と手を挙げてこそいるものの、
やはり可愛らしい笑顔でいるものが、
ぱしゃりと新たに現れて。
そのフレームの端っこには、坊やに差し出された大きめの手。
本人にも“いつの間に”と思わせる、それは屈託のない笑顔の数々だが、
“それ”へと気づいたお父様にしてみれば、
小柄で人込みに紛れやすい坊やだが、
それならそれで“彼”のほうを追えばいいだけのことよと、
コツを掴んだようなものだそうで。
そう、可愛らしい笑顔の先には必ず、
誰かさんの姿があるのがお約束だから。
そいつまで映すとネタがばれてしまうのと、何より父上が癪だから。
そやつの頭上などの側にカメラがあるという角度での
映像ばかりを集めている訳だけれども。
“…ってことは、だ。”
子悪魔坊やったら、
そやつへ向かってこ〜んないい笑顔ばかり向けてるってことの、
裏付けをとってるようなもの。
それが唯一 癪なので、消してなんかやるもんかと、
こちら様もまた、
大人げなくも…奥方まで引っ張り込む作戦をとったわけであり。
“こ〜んなむっさい兄んちゃんの、一体どこがいいんだかねぇ。”
一枚だけ、
そのお兄さんの高い高い肩の上へと肩車されてるスナップがあって。
何か大もめになるよな喧嘩でもしたなら、
これをプリントアウトして町中に貼ってやろうと、
やはり大人げないことを企む、ヨウイチロウお父様だったりするらしいです。
「……っくしょい。」
【 ? どした妖一、風邪か?】
「いや、何でだろ?」
おあとがよろしいようでvv
〜Fine〜 11.08.25.
*お久しぶりのお父様です。
そして、相変わらずに大人げないです。(笑)
タイトルは“小さな〜”としておりますが、
液晶テレビの大画面で見ているので、
全然小さくなかったですね、すいません。
こっそり撮ったぞという意味合いを持たせたかったんです、はい。
親子揃って何やってんだかですが、
ケータイの機能だけでこういうことをやっちゃうんだもの、
逆らったら怖いところもお揃いです。
私信;Hさん、
某女学園のお嬢様がたがタッグ組んだら
確かに怖いもんなしですね。(大笑)
めーるふぉーむvv
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